接地工事の施工方法

 

接地工事は感電や機能保護の観点から重要な工程となります。

正しい知識を持ち、注意ポイントをよく抑えておかないと、後に安全や品質に関わってきますのでしっかりと習得しましょう。

また、接地工事は地中埋設するため、現場によっては後戻りできなくなりますので、しっかりとした事前準備が必要です。

この記事では接地工事の施工方法から使う工具まで徹底的に解説していきます。

この記事でわかること

接地工事とは

接地工事は、機器等や金属部の異常な電位上昇や高電圧の侵入による、感電・火災その他人体に危害を及ぼし設備等の損傷を発生させないようにするため、大地(地面)に電流を逃がす電路を構築する工事です。

安全に確実に電流を逃がすために、接地工事の種別により、接地抵抗値と接地線の太さが規定されています。

接地工事をする前提知識として抑えておかなければいけません。

また、自分が何の種類の接地工事を施工するのかを理解し、接地抵抗値を抑えておきましょう。

 

接地工事で使用する工具と材料

使用する工具

  • ニッパー等(ケーブル切断できるもの)
  • 打ち込みハンマー又は削り機
  • T型コネクター用圧着器
  • 圧着ペンチ又は圧着器

使用する材料

  • アース棒又はアース銅板
  • 電線(緑、黄、赤)
  • 圧着端子(T型とP又はBスリーブ)
  • 水切り端子絶縁ゲージ

接地極の種類

内線規定により次のように規定されています。

内線規定1350-7接地極

1.埋設又は打ち込み接地極として、銅板、銅棒、鉄管、鉄棒、銅覆鋼板、炭素被覆鋼棒などを用い、これをなるべく水気のあるところで、かつ、ガス、酸などのため腐食するおそれがない場所を選び、地中に埋設または打ち込むこと。

たくさん種類が記載されていますが、一般的には銅板(アース板)と銅棒(アース棒)が使用されます。

銅板と接地棒にはそれぞれメリットデメリットがあります。

・アース板

アース板は地中と触れる面積が広いため、低い接地抵抗値をだしやすいというメリットがあります。

接地抵抗値に関してはかなりの効力を発揮しますのでA種接地(10Ω)やELCB共用接地(2Ω)などの低い抵抗値を出す必要がある場合にメインで使用し、補助でアース棒という使い方がよいでしょう。

また、地質が硬くてアース棒が入らない場合などに有効です。

デメリットとしては、重い、価格が高い、施工性が悪いことが挙げられます。

重たく広い面積を掘削する必要があるため施工性が悪くなります。

また、アース棒に比べ桁が一つ違うくらい値段が高いです。

・アース棒

アース棒ははつり機やハンマーで上から打ち込んでいくだけですので施工性が良いです。

アース棒は外径10mmと14mmがあり全長は短いもので500mmがありますが一般的に1500mmを使用します。

住宅等(D種接地100Ω)の低い抵抗値であればアース棒数本で十分規定の数値が出せます。

A種などの低い接地抵抗値であっても連結式のアース棒を使用し、上から何本も重ねて打ち込んでいけば十分

しかし、A種などの場合は地質が悪かったりするとなかなか規定の接地抵抗値がでないので、下手をすると何十本何百本と必要になるため、状況に応じて材料選定する必要があります。

割合としてはアース棒のみで済んでしまう現場のが多い印象です。

接地工事に使う接地極の本数は環境に左右されるため、やってみないとわからないというのが正直なところです。

アース棒はアース板に比べて安価ですが数を使いますので場合によってはかなりの材料費になることもあります。

ただ、新築でしたらどの現場でも使用しますので多めに用意しておくといいかもしれません。

接地工事の施工方法

掘削作業

接地極の埋設場所および接地線の経路を掘削していきます。

D種接地などの低い接地抵抗値でしたらスコップを使って手掘りでも問題ありませんが、接地極を何箇所も打ったり、銅板を埋設する場合はユンボなどの重機を使うと効率的です。

新築等のサブコン下ですと、電気土木という電気工事専門の土木屋さんがいますのでユンボでどんどん穴を掘ってくれます。

接地工事やエフレックスの埋設に慣れていますので仕事が早いです。

内線規定1350-6より、接地極は地下750mm以上の深さに埋設しますので、掘削も75cm以上掘り起こさないといけません。

接地極埋設

掘削した場所の適当なところに接地極を埋設していきます。

アース板の埋設

掘削した穴に埋るだけですが、10kg以上ある板ですので落として怪我をしないように注意して下ろしましょう。

地面を掘削したユンボで吊るして下ろすと安全です。

板は寝かしても立てても構いませんが、立てる(垂直埋設)方法が一般的です。

立てた状態で下から土が接地極とよく密着するように突き固めていき、ある程度埋まったら接地抵抗値を測定して規程の値が出ているかを確認します。

値が出ない場合は補助でアース棒を2000mm以上離して打ち、仮に電線で繋いで再度測定して、規定値が出るまで繰り返します。

接地板の上面が地下750mm以上の深さになるようにします。

アース板施工方法

注意ポイント

・重量があるので気をつけて

・接地極の深さは750mm以上・

・アース板は土とよく密着するように突き固める

・接地極同士の離隔距離は2000mm以上

アース棒の打ち込み

アース棒の場合は掘削した穴に突き刺し、上からはつり機を使用して打設していきます。

大型ハンマーでも打ち込み可能ですが、かなり力仕事になりますのではつり機をおすすめします。

また、ハンマードリルですと力が弱いのでかなり厳しいですね。

はつり機には専用のアダプタを取り付けて打ち込みます。

SDSになっていますので普通にキリを取り付ける方法と同じです。

D種の場合は100Ωですので基本的に1本打てば規定値を出すことができますが、A種等10Ω以下は何本、何10本と打つ必要があります。

そのため、基本的にアース棒は連結用を使用します。

アース棒が地面から少し出るくらいまで打ち込んだら、アース棒の頭の先端に打ち込みピンがはまっているのでそれをペンチで引き抜きます。

打ち込みピンはアース棒を打つ際に先端が潰れないようにするためのものですので、はつり機で打ち込むアース棒は引き抜きません。

打ち込みピンを引き抜いたら、引き抜いた部分に新しいアース棒を差し込み(連結し)再度打ち込んでいきます。(連結接地)

アース棒の連結方法

 

打ち込んだら接地抵抗値を測定し規定値が出ているかを確認します。

規定値が出ていなかったら再度連結して打ち込むという作業を繰り返します。

最初の方は一本連結するごとに大きく接地抵抗値が下がりますが途中から下がりにくくなってくると思います。

また、連結本数が多くなると地面にアース棒が入っていかなくなります。

その場合は、先ほどアース棒を打った場所から2000mm以上離れた場所を接地極として新しくアース棒を打ち込んでいきます。(並列接地)

接地極と接地極を仮に電線で繋ぎ(ケーブルを棒に巻きつけるだけでまだ圧着はしなくて大丈夫です)再度、接地抵抗値を測定します。

規定値が出なかったら、また2m以上離した位置に打設するといった感じで規定値が出るまでこれを繰り返します。

このように連結接地→並列接地→測定と繰り返していきます。

並列接地、連結接地の施工方法

注意ポイント

・連結の際は打ち込みピンを外す

・接地極同士の離隔距離は2000mm以上

・地面に入っていかなくなったら並列接地

接地線の接続と配線

満足する接地抵抗値が出ましたら今度は各接地極の接続と配線を行います。

一般的に接地線は600Vビニル絶縁電線の緑色を使用します。

接地抵抗値を測定した際に電線を仮に繋いでいたと思うので、それを全部圧着していきます。

アース棒の打ち込みピンを外しアース棒用リード端子を連結します。

連結したリード線に電線を圧着機や圧着ペンチでスリーブを使い接続します。

アース棒圧着方法

 

かしめタイプも販売されています。

こちらはかなり圧着しなくていいのでかなり効率的です。

上からハンマーで叩くだけで電線を接続できます。

かしめタイプアース棒施工方法

 

各接地極が繋がりましたら配線をしますが、目的地は住宅でしたら分電盤、店舗以上の物件でしたらキュービクルになります。

しかし、接地工事の段階ですとまだ上棟もしていない、下手をすると更地状態です。

ですので、一旦電線を地上に立ち上げておきます。

地面に捨てコンクリートを打つような場合はパイプ等の棒を地面に突き刺し、そこに電線を縛って電線が倒れないようにしましょう。

水切り端子を忘れずに

水切り端子施工方法

 

接地線を埋設している部分は水分を含んだ土になりますので、毛細管現象により接地線を水が伝い放っておくと建物内に浸水してしまいます。

浸水防止のため接地線には水切りスリーブ(水切り端子)を取り付けます。

また、水切りスリーブと接地線の裸部分は、鉄筋や鉄骨と接触しないように絶縁ゲージを取り付けます。

水切りスリーブの施工方法ですが、一度取り付け箇所の接地線を切断します。

次に、黄色の防水キャップを両側に先に入れておきます。

絶縁ゲージも圧着前に先に入れておきます。圧着後ですと入らなくなります。

水切りスリーブはBスリーブのような構造をしているので、スリーブの両端に切断した接地線を差し込み圧着するだけです。

最後に防水キャップを中心にずらしていけば完成です。

中心につばが付いてますのでそこで縁を切り水が伝わるのを防ぎます。

取り付け箇所は水場(外など)ですと結局意味がありません。

水気のある場所ですと、水切りスリーブの地中側は浸水防止できますが、水切りスリーブの建物側から浸水してしまいます。

そのため、地中梁の中で水切り端子を取り付けるのが一般的です。

地中ばりの鉄筋が組まれた段階で取り付けましょう。

鉄筋等と接地線の露出部が接触していないか確認し、コンクリートを流す際に動かないように適度に縛ります。

注意ポイント

・水切り端子取り付け位置は地中梁等の中

・圧着する前に絶縁ゲージと防水キャップを先に入れる

・鉄筋と接地線露出部が接触していないか確認

最後に土を埋めもどす

最後に埋め戻しをしますが、埋めもどすと施工の後戻りはできません。

施工写真が必要であれば撮り忘れがないか、接地抵抗値が確実に規定値を満足させているかを確認します。

問題なければスコップやユンボで埋め戻しましょう。

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