熱感知器(空気管式)設置方法 施工方法

1.設置基準

(1)空気管の最小露出長

空気管の露出部分は、1の感知区域ごとに20m以上とすること。
小部屋などで取付け面の各辺に空気管を設置しても、露出長が20mに満たない場合は、下図のように、2重巻き又はコイル巻きとして20m以上にすること。

(2)空気管の最大接続長

空気管の接続長は、1の検出部につき100m以下とすること。
取付け面から検出部に接続するまでの引込部分、間仕切貫通部分、はり巻き部分も接続長(全長)に含まれるので、設計に当たっては余裕を見込んだ長さにすること。なお、空気管は分岐接続してはならない。

(3)空気管の取付け位置

空気管は下図(a)のように取付け面の下方0.3m以内の位置に設け、かつ、下図(b)のように感知区域の取付け面の各辺から1.5m以内の位置とすること。

(4)空気管の相互間隔

相対する空気管の相互間隔は、主要構造部を耐火構造とした防火対象物又はその部分にあっては9m以下、その他の構造の防火対象物又はその部分にあっては6m以下となるように設けることとされ、下図はその基本形状をしめしたものである。

L=9(6)m以下 l=1.5m以内
( )内の数値は主要構造部を耐火構造とした建築物以外の場合を示す。(以下各図同じ)

ただし、感知区域の規模又は形状により有効に火災の発生を感知することができれば、この基本形状以外の方法でもよいとされている。その方法を次に示す。

[一辺省略]
下図のような場合、壁面に沿う一辺(---部分)を省略することができる。

下図はこの形状を2段に重ねたもので、下の段の一辺省略部分は壁面に沿ってないが、上段の底辺が省略部分を通り、かつ、同一検出部に接続されている場合は有効とされている。

下図は、一辺省略部分が向き合っていて、Loが9(6)mをこえて基準から外れるので、この方法によることができない。

[二辺省略]
下図(a)、(b)は、二辺省略の実施例を示したものである。空気管の短い方の相互間隔(L‘の方向)を6(5)m以下とした場合は、他の相互間隔(L1の方向)は9(6)m以上とすることができる。

[一辺省略と二辺省略の組合せ]
下図は一辺省略と二辺省略の組合せたもので、工場、倉庫、体育館などに広く利用されている。

以上いずれかの場合も感知区域ごとの20m以上の露出長、1検出部に接続できる最大長が100m以下となるようにしなければならない。なお、検出部を異にする空気管が平行して隣接する上図(b)、(c)の場合のlの空気管の間隔は1.5m以内であること。

2.特殊な場所の設計

特殊な形状又は文化財等の特殊な防火対象物にあっては、必ずしも基準通り設置できない場合もある。このようなときは、有効に火災の発生を感知することができる場合に限って、設置方法の特例が認められている。以下、その具体例を示す。

(1)小区画が連続してある場合

[はり等の深さが0.6m以上1m未満の場合]

・1の区画の面積が20㎡以下の場合
0.6m以上1m未満の突出したはり等で2以上連続して区画されている場合は、隣接する区画との面積合計が20㎡以下ごとに1の感知区域とし、各区域ごとに1本以上の空気管を設置し、露出長が20m以上となるようにすること。下図(a)、(b)は、その1例を示したものである。

・ 1の区画の面積が20㎡を超える場合、当該区画ごとに1の感知区域とすること。

[はり等の深さが1m以上の場合]
1m以上突出したはり等で区画された部分ごとに、1の感知区域とすること。

(2)1の小区画が隣接してある場合

[はり等の深さが、0.6m以上1m未満の場合]
下図(a)、(b)のように、0.6m以上1m未満のはり等で区画された5㎡以下の小区画が1つ隣接してある場合は、当該小区画を含めて同一感知区域とすることができる。

[はり等の深さが、1m以上の場合]
1m以上突出したはり等で区画された部分ごとに、1の感知区域とすること。

(3)取付り面が段違いの場合

[段違いが0.6m未満の場合]
下図(a)、(b)のように段違いの深さが0.6m未満であれば平面天井とみなして、同一感知区域とすることができる。

[段違いが0.6以上の場合]
段違いの深さが0.6m以上の場合であっても、次の場合にあっては、段違い天井を1の感知区域とすることができる。

・主たる取付け面より低い段違いが壁面側にある場合
主たる取付け面より深さが0.6m以上の低い段違いが壁面側にある場合、下図(a)のようにその幅が3m未満の場合は同一感知区域とすることができる。ただし、下図(b)のように、その幅が3m以上の場合は、それぞれ別の感知区域とすること。

・主たる取付け面より高い段違いが壁面側にある場合
下図(a)のように、深さが0.6m以上の高い段違いが壁面側にある場合、段違いの幅が1.5m未満の場合は同一感知区域とすることができる。
下図(b)のように1.5m以上の場合は、それぞれ別の感知区域とすること。

・主たる取付け面より低い段違いが中央にある場合
下図(a)のように、深さが0.6m以上の低い段違いがある場合、その低い部分の幅が主要構造部を耐火構造とした防火対象物にあっては6m(その他の構造の防火対象物にあっては5m)未満の場合は同一感知区域とすることができる。ただし、下図(b)のように低い部分の幅が6(5)m以上の場合は、それぞれ別の感知区域とすること。 a、b又はb、cは同一感知区域とすることができる。ただし、空気管はa及びcの高い天井面に設置

・主たる取付け面より高い段違いが中央にある場合
下図(a)のように、深さが0.6m以上の高い段違いがある場合、段違い部分の幅が1.5m未満の場合は同一感知区域とすることができる。ただし、下図(b)のようにその幅が1.5m以上の場合は、それぞれ別の感知区域とすること。

(4)棚又は張出し等がある場合

取付り面より0.5m以上下がった部分に、下図のように短辺が3m以上で、かつ、面積が20㎡以上の棚又は張出し等がある場合は、取付け面とは別の感知区域とすること。

なお、下図は、当該棚又は張出し等と取付り面との距離が0.5m未満の場合は、当該棚又は張出し等に相当する天井面の部分には、感知器の設置を省略することができる。

(5)傾斜形天井の場合

天井面の傾斜角度が3/10未満の場合は、平面天井とみなして設置する。ただし、傾斜角度が3/10以上の場合は次の方法により設けること。

[3/10以上の傾斜形天井の場合]
建物の両側壁から、1.5m(l)を除いた幅を、空気管の平均設置間隔(耐火構造6m、その他の構造5m)以内となるように空気管の必要本数を割り出し、頂部に1本以上設置するほか、頂部を密とし、空気管の平均間隔が6(5)m以下となるようにし、かつ、設置位置が左右対称となるようにすること。この場合に、粗となる空気管の最大間隔は9(8)mを超えないこと。なお、空気管は、下図の「適」のように頂部に平行して空気管の長い辺が通るように設けること。

下図は40m(34)mの幅の防火対象物に設置した場合の例を示したもので、密の部分を3(2)m、平均間隔を6(5)m、最大間隔を9(8)mとしたものである。

[越屋根がある場合]
傾斜天井部分の傾斜角度が3/10以上の場合は、前項の傾斜形天井に準じて行い、越屋根部分については次のように設けること。

・越屋根部の幅が1.5m未満の場合
下図のように、越屋根部の基部には、それぞれ1本の空気管を設けるようにする。なお、越屋根の構造が換気の目的で使用される場合は、熱気流の経路となるような位置を選定して設けること。

・越屋根部の幅が1.5m以上の場合
越屋根部の幅が1.5m以上の場合は、下図のように越屋根部を1の感知区域とし、越屋根の合掌部の頂部に空気管を設けるはか、傾斜天井部は前記の方法により設けること。

なお、越屋根の構造がベンチレーターなどによる換気等の目的に使用されている場合は、越屋根部には空気管を設ける必要はないが、熱気流の経路となる越屋根の基部には下図のようにその部分を1の感知区域とみなして空気管を設けること。この場合、別の検出部で警戒しないようにすること。

[のこぎり形天井の場合]
この場合も傾斜角度が3/10以上の場合は、傾斜形天井の例により設ける。なお、のこぎり形状dの深さによる感知区域の設定は、次によること。

・のこぎり形状の深さが0.6m以上の場合
下図のようにdの深さが0.6m以上の場合は、傾斜角度のいかんにかかわらず、a、bはそれぞれ別の感知区域とすること。

・のこぎり形状の深さが0.6m未満の場合
下図のようにdの深さが0.6m未満であれば、a、bは同一感知区域とすることができる。また、傾斜角度が3/10未満であれば平面天井とみなして設置することができる。

[円形天井の場合]
下図のように円形天井の場合で、傾斜角度が3/10以上の場合は、傾斜形天井に準じて設置する。

円形天井の傾斜角度の算出は、下図のように円形天井の最頂部と最低部を直線で結んだ角度が3/10以上の場合に傾斜形天井とみなす。

また、下図のように円形天井が2以上隣接している場合で、dの深さが0.6m以上の場合は傾斜角度のいかんにかかわらず、a、bはそれぞれ別の感知区域とすること。

[その他の特殊天井の場合]
特殊な形状の天井の場所は必ずしも規定どうり空気管を設置することができないので、特例となる場合が多い。

・逆円形天井の場合
下図のような逆円形天井で、dの深さが0.6m以上であれば、a及びbの範囲はそれぞれ別の感知区域とみなし、dの深さが0.6m未満の場合はa、bは同一感知区域とすることができる。

設置方法は、原則として傾斜形天井の例により行う。また、dの深さが0.6m以上であれば傾斜角度に関係なくa、bはそれぞれ別の感知区域とみなし、下図のように設置する。

3.差動式分布型感知器

差動式分布型には空気管式及び熱電対式とあるが、施工については、それぞれ次によること。

(1)施工方法

[木造(和室)の場合]
和室の場合は、下図のように、回り縁にそって空気管を設置する。

[耐火構造の場合]

・テックス、耐火ボードなどの天井
天井材がテックス、耐火ボード等の場合は、原則としてその継目に布設しないこと。ただし、下図のように、あて木などを使用して空気管が露出するようにした場合は、設置することができる。

・コンクリート天井、モルタル天井
コンクリート天井、モルタル天井等の堅い天井面に、空気管を設置する場合、下図のように、コンクリートドリル等で、あらかじめ天井等に穴をあけてからステップルで取付けること。
穴は、径が必要以上に大きくなったり、深くなったりしないように注意すること。
なお、モルタル、しっくい天井等の場合は、取付け面が乾燥しないうちに取付けると空気管及びステップが腐食するおそれがあるので、できる限り乾燥したのちに設置すること。

[鉄骨構造の場合]

・メッセンジャー張り
鉄骨構造、アングル組立天井の工場、作業場などで、空気管を設置する場合、ビニル被覆のメッセンジャーを用いて、天井面から離れた空間に設置する。この場合、天井面からの距離0.3m以内に、ゆるまないように設置すること。
下図は、空気管をバインド線でとめた方法の例を示したもので、この場合、空気管、メッセンジャーワイヤー、バインド線は、すべてビニル被覆されたものを使用すること。

SSパイプによる場合
下図は、空気管とメッセンジャーワイヤーが平行に配列され、ビニル被覆で一体に形成されたもので、SSパイプ(セルフサポートパイプ)と一般に呼ばれている。

下図は、SSパイプを用い、巻線法でアングルに引きとめた施工例を示したものである。

なお、メッセンジャーワイヤーの引きとめ方法は、下図(a)のように、バインド線を用いてアングル等に固定するとめ金具法、下図(b)のようにターンバックル等を使用する方法がある。

・クリップとめの場合
下図は、特殊クリップを用いて、アングルに設置した例を示したものである。とめ金具クリップ等の間隔を35cm以内とし、空気管は当て板等によって、アングル(金属面)から若干離れるように設置すること。

(2)空気管の接続

[スリーブジョイント]
空気管の接続は、下図のように、スリーブを用いてハンダづけを行うこと。接続は、空気管の端をよく磨き、導きハンダを施し、この部分をスリープに差し入れ、スリープの表面を磨いてハンダづけする。

なお、接続した部分は、腐食等を考慮し、空気管の塗装色にあわせて塗装すること。また、ビニル被覆の空気管の場合は、下図のように、ジョイント部分をビニルチューブで被覆し、口元には防食塗料を塗っておくこと。

[空気管接続後の確認]
接続を行った後は、接続個所の良否及び空気管に、ハンダやペーストなどの流入による流通不良を調べるため、流通試験を行うこと。

[銅管端子の接続と検出部への取付け]

・空気管と銅管端子の接続は、下図のようにハンダ付けするが、空気管内部にハンダやペーストなどを流し込まないように、注意すること。

・銅管端子は、下図のように、鉛又は樹脂製の空気漏れ防止用パッキングを銅管端子の両側に挟み、溝付きの締付けネジで、検出部のコックスタンド(試験機構)の空気管接続端子に、確実に締付ける。この場合、空気管に若干の余裕を持たせること。

(3)とめ金具

[とめ金具の種類]
下図は、通常使用されているとめ金具を示したものである。特殊な取付け個所には、本表以外のとめ金具が使用される場合もある。

[直線部分のとめ方]
とめ金具の間隔は、下図のように35cm以内とし、かつ、美観上を考慮して等間隔とする。また、垂れ下がるおそれのある場合は、さらに細分して空気管を確実に固定すること。

なお、ビニル被覆した空気管の場合は、ビニル被覆に傷がつくと、その部分から腐食するので、ステップの打ちかたにに十分注意すること。

[屈曲部分のとめ方]
屈曲部は、下図のように、屈曲部から5cm以内にステップルで止めること。

[接続部分のとめ方]
空気管の接続部分は、下図のように、スリープの両端から5cm以内とすること。

[屈曲部の半径]
屈曲部の半径は、下図のように、5mm以上とすること。Rをとる場合は、空気管をつぶすことのないように十分注意すること。

(4)貫通個所

空気管が壁又は天井を貫通する場合は、保護管を使用する。貫通個所の保護管は、壁面等から突き出さないようにし、保護管の口元にはキャップを用いること。

[天井面の貫通]
下図は、天井面の貫通例を示したものである。

[壁面の貫通]

・木造の場合
下図(a)は、薄い板張り等の間仕切りの例で、この場合は、保護管を用いず、三つ目錐等で空気管の通る程度の穴をあけ、キャップは小形のものを用いる。下図(b)は、厚い壁の場合の例で、保護管は回り縁の下を通すようにする。

・耐火構造の場合
耐火構造部分の壁の貫通部は、下図のように、壁面から保護管が突き出ないようにし、保護管がコンクリートなどで埋め込まれることがないように予備線を通しておくか、口元に栓をしておくこと。

(5)検出部の取付け

[検出部の取付け位置]
点検が容易な場所で、かつ、通行の支障とならない位置とする。廊下等に設ける場合は、機器収容箱に収容される場合を除き、床上2m前後の個所がよい。

[取付方法]

・露出配管の場合
下図は、露出配管の例を示したものである。

・いんぺい配管の場合
下図は、検出部の埋込型の例を示したものである。

・埋込配管の場合
下図は、埋込ボックス(専用のものが多い)を用いた取付け例である。取付けボックス及び表面プレートは、傾かないように注意すること。

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