違いや意味が分かりづらいEVT、ZPD……
EVT、GVT、GPT、ZPD、ZPC……、多くの技術者が理解に苦しんでいるであろうことについて今回は記事にします。
どれも高圧受電設備に関係するみたいだけど、違いが分からない!
受電設備には地絡を検出し、事故系統を迅速に遮断する「地絡方向 継電器(67)」という保護装置がありますが、これは零相電流と零相電圧という地絡時に発生する電流要素と電圧要素を取り込むことで、地絡事故が需要家外か需要家内で起きたのかを正確に判定しています。
詳しくは私が昔書いたブログ記事を見てください。ちなみに「地絡方向継電器」でキーワード検索するとけっこう上位でヒットします(笑)
またこの記事を読む前に中性点接地方式についてサッと理解しておくと良いかもしれません。(下記HPなど参考になります)
さて取り込む要素のうち、零相電流はZCT(Zero Current Transformer)で検出できることは、割と多くの方が知っていると思います。原理も簡単なので、上記記事に解説は任せるということで割愛します。
問題は「零相電圧をどうやって検出するか」です。
ここでEVT、GVT、GPT、ZPD、ZPC、ZVT、GTR、NGRなど同じor似たような用途でありながら、区別がつきづらい用語が多数登場します。一つ一つ見ていきましょう。
接地形計器用変圧器(EVT、GVT、GPT)について
まずEVT、GVT、GPTですが、これらは同一のものです。役割としては零相電圧、三相電圧の検出が主になります。
EVT:Earthing Voltage Transformer
GVT:Grounding Voltage Transformer
GPT:Grounding Potential Transformer
いずれも接地形計器用 変圧器のことを指します。以前はGPTと呼称されることが多く、最近ではEVTと呼ぶのが主流みたいですね。古い文献や図面ではGPT、比較的新しいものではEVTという解釈で良いと思います。またGVTという表記も見受けられますが同じものです。
適用先としては非接地方式(主に6.6kVの配電系統に適用される方式。誘導障害の防止と保安の観点から地絡電流を極力小さくしたい系統)の配 電線が挙げられます。
接地形計器用変圧器は構造的にはY-Y-Δの変圧器であり、1次・2次・3次で役割を分けてみましょう。
1次:母線と接続し、1次側中性点を直接接地する
2次:Y-Y(1次-2次)で計器表示・保護継電器で使用する母線の三相電圧を取り出す(1次と同じく中性点は直接接地)
3次:Y-Δ(1次-3次)接続し、3次側をオープンデルタ(Δ結線の1角を開いているもの)とすることで、そこから零相電圧を取り出す
変圧器1台で三相電圧と零相電圧が分かるため、大変便利なものとなります。また1次側中性点を直接接地していますが、3次側のオープンデルタに制限抵抗(CLR:Current Limit Resistor)を接続することで、等価換算すると1次側中性点が「数10kΩの抵抗を介して接地している」という状態になります。
これにより地絡事故時に流れる地絡電流を制限することが可能になり、設備の損壊や誘導障害をある程度防止できます。(零相電圧が検出できる原理については割愛)
ちなみにEVTについては下記資料が理解の助けになると思います。
EVTとDGR.pdf (gotodenkikanri.co.jp)
Microsoft Word – ZVT01-M-001.doc (hasegawa-elec.co.jp)
零相計器用変圧器(零相蓄電器)ZPD、ZPC、ZVT
次にZPD、ZPC、ZVTですが、これらも全て同じもので、接地形計器用 変圧器と同様に零相電圧の検出に使用します。
ZPD:Zero phase Potential Devicer(Detecter)
ZPC:Zero phase Potential Capasiter
ZVT:Zero phase Voltage Transformer
いずれも零相計器用変圧器(零相蓄電器)を指します。一般的にはZPDと呼称されるケースが多く、ZPCは光商工(株)の出しているZPDの型番を指します。また調べた範囲ではZVTも同一のものみたいです(Transformerと書かれているので?でしたが、下記の資料やHPから同じと判断しました)
ZPDは母線に接続され、地絡事故時に検出用 コンデンサにかかる電圧から零相電圧を検出します。(検出原理は割愛)
EVTとの大きな違いはコンデンサによって零相電圧を検出するという部分です。具体的にはコンデンサは直流を通さないという点が非常に重要になります。これは事故点を絶縁抵抗計(直流)によって探索するためことが関係します。このへんは別の記事で詳しく述べたいと思います。
またZPDについてもEVTと同じく下記資料が役に立つと思います。
EVTとDGR.pdf (gotodenkikanri.co.jp)
GTRとNGR(抵抗接地方式で用いるもの)
さて最後にGTRとNGRです。これらは違うものですが、同一の接地設備に使用します。
GTR:Grounding Transformer (接地変圧器)
NGR:Neutral Grounding Resistor (中性点接地抵抗器)
配電線が抵抗接地方式(系統の中性点を抵抗器を通して接地するもので、22kV~154kVで広く採用)の場合にこれらの機器は使用されます。
GTRは構造としてはY-Δの変圧器であり、下記のような役割となります。
1次:母線と接続し、1次側中性点を中性点接地抵抗(NGR)を介して接地する
2次:Y-Δ(1次-2次)で2次側をオープンデルタとすることで、零相電圧を検出する
EVTと似ていますが、EVTは非接地方式の系統、GTRは抵抗接地方式の系統でそれぞれ零相電圧を検出する点が大きく異なります。また接地方式の違いから、GTRはある程度大きな地絡電流が流れる前提の機器である点も違います。
GTRやNGRについては下記資料がEVTとの差異も含め、分かりやすいと思います。
36巻05号_P050_051_FAQ (jst.go.jp)
まとめ
- EVT、GVT、GPTは接地形計器用 変圧器を指し、非接地方式に用いるものであり、三相電圧・零相電圧の検出を行う。
- ZPD、ZPC、ZVTは零相計器用変圧器(零相蓄電器)を指し、零相電圧を検出する。
- GTR(接地変圧器)とNGR(中性点接地抵抗器)は抵抗接地方式で用い、合わせて使用することで零相電圧を検出する。
長くなりましたが、解説を終わります。それにしてもややこしいですよね。Yahoo知恵袋でもこのへんの質問者が多く、たくさんの方が悩みを持ってそうなので久々に記事にまとめました。
以上、皆さんの理解の一助になれば幸いです。