接地工事の種類と接地抵抗値(電技解釈第17条)

接地工事は電気工事の中でも大事な工事で、漏電による感電火災事故の防止漏電遮断器の確実な動作、異常電圧の抑制などを目的として行われる工事です。

接地って何? なんで接地が必要なの?

 

例えば、100Vのコンセントに接続された電気機器が金属製の箱(ケース)の中に入っているとします。

 

電気機器が入った金属製の箱(ケース)

 

この電気機器が入った金属製の箱は何も異常がないときは手で触ってもなんてことはないですよね。

 

異常がない時は手で触ってもOK!

 

でも、金属製の箱に入った電気機器が異常になって箱の中で電気が漏れていたら、どうなっちゃうでしょうか?(電気が漏れることを漏電といいます。)

 

例えば何か異常があって、コンセントの100Vが金属製の箱にもつながってしまったとしますよね。

 

すると、箱は金属製で電気を通すことができるので、箱にコンセントの電圧がそのままかかってしまうことになります。

 

箱にコンセントの電圧100Vがそのままかかっている

 

この100Vの電圧がかかっている箱を触ってみることにしましょう!
※実際にこんな実験をしてはダメですよ!

 

100Vの電圧がかかっている箱に触ったので感電する

 

100Vの電圧がかかっている箱に触ったので、当然、感電します

 

上の図には「痛すぎる~!」なんて書いてますが、そんなことではすまない事態になる場合もあります。

そこで、このような感電事故を防止するために接地工事をします。

 

接地とは「大地に接続する」という意味でした。

では、金属製の箱を大地に接続してみましょう。

 

接地工事された金属製の箱

 

上の図のように、接地するときには「接地線」と「接地極」を使用し、大地に接続することを接地(その工事を接地工事)といいます。

 

接地線は銅でできた線(つまり銅線)、接地極は銅でできた棒で、金属製の箱と接地極を接地線でつないで接地極を大地に埋め込みます。

 

それでは、接地された金属製の箱に100Vの電圧がかかっていて、このときに箱に手で触れた場合にどうなるでしょうか? 感電するんでしょうか? 触ってみましょう。

 

接地工事された金属製の箱に触れた場合

 

この場合は、100Vの電圧によって流れる電流は人(おじさん)の方には流れず、接地線を通って大地に流れるので感電しないんですね。

なんで?

人体の抵抗値よりも接地線側の方が抵抗値が小さい(そうなるように接地工事をしている)ので、電流は接地線側に多く流れ、人体側にはほとんど流れません。

 

接地線側の方が抵抗値が小さいので電流のほとんどは接地線側を流れる

 

この理由は次のような回路を考えてみれば分かりますね。(分流)

 

接地線がある場合とない場合の電流

 

左の図は接地線がある場合の電流の流れ方です。接地線があるので人体と接地線に電流が分流(分かれて流れるという意味)しますが、人体側の抵抗値に比べて接地線側の抵抗値(接地抵抗値)が小さいので、流れる電流のほとんどが接地線側を通ります。

右の図は接地線がない場合の電流の流れ方です。接地線がないので、流れる電流のすべてが人体側を通ります。

上の2つの図を見比べてみると、接地線があるかないかで、人体に流れる電流の大きさがぜんぜん違うということが分かりますね。

なので、万が一金属製の箱に電気が漏れても、箱を接地しておけば人が箱に触れても感電しないということになります。

このように、感電防止のために接地をすることが接地工事の目的の一つになります。

あ、それから、接地をすることを「接地をとる」とか「アースをとる」と言ったりもしますよ。

ここまでの説明で接地のイメージができたと思うので、次は本題の接地工事の種類と接地抵抗値について解説します。

 

接地工事の種類と接地抵抗値

接地工事の種類と接地抵抗値については「電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)」の第17条で決められていて、接地工事にはA種接地工事、B種接地工事、C種接地工事、D種接地工事の4種類があります。

ちなみに昔は、

  • A種接地工事を第一種接地工事
  • B種接地工事を第二種接地工事
  • C種接地工事を特別第三種接地工事
  • D種接地工事を第三種接地工事

と言っていました。

これら4種類の接地工事について、A種接地工事から順番に説明します。

A種接地工事

A種接地工事は、高圧または特別高圧などの電圧が高い機器の鉄台、金属製外箱などを接地するときに適用される接地工事になります。

A種接地工事の接地抵抗値は10Ω以下で、使われる接地線の種類は引張強さ1.04kN以上の金属線または直径2.6mm以上の軟銅線になります。

 

B種接地工事

B種接地工事は、高圧または特別高圧と低圧を結合する変圧器の中性点(中性点がない場合は低圧側の一端子)を接地するときに適用される接地工事になります。

B種接地工事の接地抵抗値は、変圧器の高圧側または特別高圧側の電路の1線地絡電流のアンペア数で150を除した値以下で、使われる接地線の種類は引張強さ2.46kN以上の金属線または直径4mm以上の軟銅線になります。

 

C種接地工事

C種接地工事は、300Vを超える低圧の機器の鉄台、金属製外箱などを接地するときに適用される接地工事になります。

C種接地工事の接地抵抗値は10Ω以下で、使われる接地線の種類は引張強さ0.39kN以上の金属線または直径1.6mm以上の軟銅線になります。

※移動して使用する電気機械器具の接地線で、多心コードまたは多心キャブタイヤケーブルの1心を使う場合は、0.75mm2以上。

ただし接地抵抗値は、低圧電路において、当該電路に地絡を生じた場合に0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を施設するときは500Ω以下になります。

 

D種接地工事

D種接地工事は、300V以下の機器の鉄台、金属製外箱などを接地するときに適用される接地工事になります。

D種接地工事の接地抵抗値は100Ω以下で、使われる接地線の種類は引張り強さ0.39kN以上の金属線または直径1.6mm以上の軟銅線になります。

※移動して使用する電気機械器具の接地線で、多心コードまたは多心キャブタイヤケーブルの1心を使う場合は、0.75mm2以上。

ただし接地抵抗値は、低圧電路において、当該電路に地絡を生じた場合に0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を施設するときは500Ω以下になります。(C種接地工事と同じですね。)

 

比較しやすいようにA種接地工事からD種接地工事までを表にまとめると次のようになります。

 

接地工事の種類
接地工事の種類 摘要 接地抵抗値 接地線
A種接地工事 高圧または特別高圧などの電圧が高い機器の鉄台、金属製外箱などの接地 10Ω以下 引張強さ1.04kN以上の金属線または直径2.6mm以上の軟銅線
B種接地工事 高圧または特別高圧と低圧を結合する変圧器の中性点(中性点がない場合は低圧側の一端子)の接地 変圧器の高圧側または特別高圧側の電路の1線地絡電流のアンペア数で150を除した値以下 引張強さ2.46kN以上の金属線または直径4mm以上の軟銅線
C種接地工事 300Vを超える低圧の機器の鉄台、金属製外箱などの接地 10Ω以下
(ただし、低圧電路において、当該電路に地絡を生じた場合に0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を施設するときは500Ω以下)
引張強さ0.39kN以上の金属線または直径1.6mm以上の軟銅線
(移動して使用する電気機械器具の接地線で、多心コードまたは多心キャブタイヤケーブルの1心を使う場合0.75mm2以上)
D種接地工事 300V以下の機器の鉄台、金属製外箱などの接地 100Ω以下
(ただし、低圧電路において、当該電路に地絡を生じた場合に0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を施設するときは500Ω以下)
引張り強さ0.39kN以上の金属線または直径1.6mm以上の軟銅線
(移動して使用する電気機械器具の接地線で、多心コードまたは多心キャブタイヤケーブルの1心を使う場合0.75mm2以上)

 

第二種電気工事士の学科試験でよく出題されるのはC種接地工事とD種接地工事についての問題で、特にD種接地工事がよく出題されています。D種接地工事の接地抵抗値100Ω以下は基本中の基本なのでちゃんとおぼえておきましょう。

 

それから、C種接地工事とD種接地工事では表にも書いてあるように、

「地絡を生じた場合に0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を施設するときは500Ω以下」

となります。

これについても度々問われているので、こちらもあわせておぼえておくようにしましょう。

 

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