主任技術者に必要な資格・実務経験は?
工事を受注した企業に直接雇用されており、3つのうちいずれかを満たす人であれば、主任技術者になることが可能です。
次の章からは、3種類の条件についてそれぞれくわしく解説します。
指定された、1級・2級国家資格を持っている
主任技術者になることができる条件の1種類目は、国家資格を持っていることです。施工管理技士や建築士など、許可を受けようとする建設業に応じた資格を所持していれば、主任技術者になることができます。
29種類の建設業ごとの資格例は次の通り。なお、国家資格は1級・2級どちらでも要件を満たせるケースが大半です。
主任技術者になることができる国家資格の一覧
建設業の許可業種 | 主任技術者の国家資格要件 |
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土木工事業 | ①技術検定 ・建設機械施工技士 ・1級土木施工管理技士 ・2級土木施工管理技士(土木) ②技術士 ・建設部門 ・農業部門(農業土木) ・森林部門(森林土木) ・水産部門(水産土木) ・総合技術監理部門(建設部門、農業土木) (森林土木、水産土木) |
建築工事業 | ①技術検定 ・1級建築施工管理技士 ・2級建築施工管理技士(建築) ②建築士 ・1級建築士 ・2級建築士 |
電気工事業 | ①技術検定・電気工事施工管理技士 ②技術士 ・電気電子部門 ・建設部門 ・総合技術監理部門(電気電子部門、建設部門) ③電気工事士免状交付者 ・電気工事士(第1種、第2種) (第2種については有資格後3年以上の実務経験が必要) ④電気主任技術者免許状交付者 ・電気主任技術者(第1、2、3種) (有資格後5年以上の実務経験が必要) ⑤建設工事に従事する者の技術・技能審査等事業 ・1級計装士(合格後1年以上の実務経験が必要) ⑥建築設備に関する知識及び技能の審査 ・建築設備士(有資格後1年以上の実務経験が必要) |
管工事業 | ①技術検定・管工事施工管理技士 ②技術士 ・機械部門(流体工学、熱工学) ・上下水道部門 ・衛生工学部門 ・総合技術監理部門(流体工学、熱工学) (上下水道部門、衛生工学部門) ③技能検定(1、2級とも) ・建築板金(選択科目:ダクト板金作業) ・冷凍空気調和機器施工 ・配管(選択科目:建築配管作業) (いずれも2級は合格後3年以上の実務経験が必要) ④給水装置工事主任技術者試験 ・給水装置工事主任技術者(有資格後1年以上の実務経験必要) ⑤建設工事に従事する者の技術・技能審査等事業 ・1級計装士(合格後1年以上の実務経験が必要) ⑥建築設備に関する知識及び技能の審査 |
鋼構造物工事業 | ①技術検定・1級土木施工管理技士 ・1級建築施工管理技士 ・2級土木施工管理技士(土木) ・2級建築施工管理技士(躯体) ②建築士 ・1級建築士 ③技術士 ・建設部門(鋼構造及びコンクリート) ・総合技術監理部門(鋼構造及びコンクリート) ④技能検定(1、2級とも) ・鉄工 (改正令による改正後の鉄工については「製罐作業」又は 「構造物鉄工作業」) (2級は合格後3年以上の実務経験が必要) |
ほ装工事業 | ①技術検定・建設機械施工技士 ・1級土木施工管理技士 ・2級土木施工管理技士(土木) ②技術士 ・建設部門 ・総合技術監理部門(建設部門) |
造園工事業 | ①技術検定 ・造園施工管理技士 ②技術士 ・建設部門 ・森林部門(林業、森林土木) ・総合技術監理部門(建設部門、林業、森林土木) ③技能検定(1、2級とも) ・造園(2級は合格後3年以上の実務経験が必要) |
大工工事業 | ①技術検定 ・1級建築施工管理技士 ・2級建築施工管理技士(躯体又は仕上げ) ②建築士 ・1級建築士 ・2級建築士 ・木造建築士 ③技能検定(1、2級とも) ・建築大工 ・型枠施工 (2級は合格後3年以上の実務経験が必要) |
左官工事業 | ①技術検定 ・1級建築施工管理技士 ・2級建築施工管理技士(仕上げ) ②技能検定(1、2級とも) ・左官 (2級は合格後3年以上の実務経験が必要) |
とび・土工工事業 | ①技術検定 ・建設機械施工技士 ・1級土木施工管理技士 ・1級建築施工管理技士 ・2級土木施工管理技士(土木又は薬液注入) ・2級建築施工管理技士(くたい) ②技術士 ・建設部門 ・農業部門(農業土木) ・森林部門(森林土木) ・水産部門(水産土木) ・総合技術監理部門(建設部門、農業土木) (森林土木,水産土木) ③技能検定(1、2級とも) ・とび(2級は合格後とび工事3年以上の実務経験が必要) ・型枠施工(2級は合格後コンクリート工事3年以上実務経験必要) ・コンクリート圧送施工(2級は同上) |
石工事業 | ①技術検定 ・1級土木施工管理技士 ・1級建築施工管理技士 ・2級土木施工管理技士(土木) ・2級建築施工管理技士(仕上げ) ②技能検定(1,2級とも) ・ブロック建築石材施工 (2級は合格後3年以上の実務経験が必要) |
屋根工事業 | ①技術検定 ・1級建築施工管理技士 ・2級建築施工管理技士(仕上げ) ②建築士 ・1級建築士 ・2級建築士 ③技能検定(1、2級とも) ・建築板金 ・かわらぶき (2級は合格後3年以上の実務経験が必要) |
タイル・れんが・ブロック工事業 | ①技術検定 ・1級建築施工管理技士 ・2級建築施工管理技士(躯体又は仕上げ) ②建築士 ・1級建築士 ・2級建築士 ③技能検定(1、2級とも) ・タイル張り ・築炉 ・ブロック建築 (2級は合格後3年以上の実務経験が必要) |
鉄筋工事業 | ①技術検定 ・1級建築施工管理技士 ・2級建築施工管理技士(躯体) ②技能検定(1、2級とも) ・鉄筋施工(鉄筋施工図作成作業) ・鉄筋施工(鉄筋組立て作業) (2級は合格後3年以上の実務経験が必要) |
しゅんせつ工事業 | ①技術検定 ・1級土木施工管理技士 ・2級土木施工管理技士(土木) ②技術士 ・建設部門 ・水産部門(水産土木) ・総合技術監理部門(建設部門、水産土木) |
板金工事業 | ①技術検定 ・1級建築施工管理技士 ・2級建築施工管理技士(仕上げ) ②技能検定(1、2級とも) ・工場板金 ・建築板金 (2級は合格後3年以上の実務経験が必要) |
塗装工事業 | ①技術検定 ・1級土木施工管理技士 ・1級建築施工管理技士 ・2級土木施工管理技士(鋼構造物塗装) ・2級建築施工管理技士(仕上げ) ②技能検定(1、2級とも) ・塗装(2級は合格後3年以上の実務経験が必要) ・路面標示施工(単1級) |
ガラス工事業 | ①技術検定 ・1級建築施工管理技士 ・2級建築施工管理技士(仕上げ) ②技能検定(1、2級とも) ・ガラス施工 (2級は合格後3年以上の実務経験が必要) |
防水工事業 | ①技術検定 ・1級建築施工管理技士 ・2級建築施工管理技士(仕上げ) ②技能検定(1、2級とも) ・防水施工 (2級は合格後3年以上の実務経験が必要) |
内装仕上工事業 | ①技術検定 ・1級建築施工管理技士 ・2級建築施工管理技士(仕上げ) ②建築士 ・1級建築士 ・2級建築士 ③技能検定(1、2級とも) ・畳製作 ・内装仕上げ施工 ・表装 (2級は合格後3年以上の実務経験が必要) |
機械器具設置工事業 | ・機械部門 ・総合技術監理部門(機械部門) |
熱絶縁工事業 | ①技術検定 ・1級建築施工管理技士 ・2級建築施工管理技士(仕上げ) ②技能検定(1、2級とも) ・熱絶縁施工 (2級は合格後3年以上の実務経験が必要) |
電気通信工事業 | ①技術士 ・電気電子部門 ・総合技術監理部門(電子電気部門) |
さく井工事業 | ①技術士 ・上下水道部門(上水道及び工業用水道) ・総合技術監理部門(上水道及び工業用水道) ②技能検定(1、2級とも) ・さく井(2級は合格後3年以上の実務経験が必要) ③建設工事に従事する者の技術・技能審査等事業 ・地すべり防止工事士(登録後1年以上の実務経験が必要) |
建具工事業 | ①技術検定 ・1級建築施工管理技士 ・2級建築施工管理技士(仕上げ) ②技能検定(1、2級とも) ・建具製作 ・カーテンウォール施工 ・サッシ施工 (2級は合格後3年以上の実務経験が必要) |
水道施設工事業 | ①技術検定 ・1級土木施工管理技士 ・2級土木施工管理技士(土木) ②技術士 ・上下水道部門 ・衛生工学部門(水質管理、廃棄物管理) ・総合技術監理部門(上下水道部門、水質管理、廃棄物管理) |
消防施設工事業 | ①消防設備士 ・甲種消防設備士 ・乙種消防設備士 |
清掃施設工事業 | ①技術士 ・衛生工学部門(廃棄物管理) ・総合技術監理部門(廃棄物管理) |
管工事業(水道本管) | ①技術検定 ・1級管工事施工管理技士 ・2級管工事施工管理技士 ・1級土木施工管理技士 ・2級土木施工管理技士(土木) ②技能検定(1、2級とも) ・配管(合格後3年以上の実務経験が必要) ③給水装置工事主任技術者試験 ・給水装置工事主任技術者 |
管工事業(ガス本管) | ①技術検定 ・1級管工事施工管理技士 ・2級管工事施工管理技士 ・1級土木施工管理技士 ・2級土木施工管理技士(土木) ②ガス主任技術者試験 ・ガス主任技術者(甲種・乙種) 2)福井市企業局認定資格試験 ・ガス工事主任技術者 |
土木工事業(下水道推進工事) | ①技術検定 ・建設機械施工技士 ・1級土木施工管理技士 ・2級土木施工管理技士(土木) ②技術士 ・建設部門 ・農業部門(農業土木) ・森林部門(森林土木) ・水産部門(水産土木) ・総合技術監理部門(建設部門、農業土木、 森林土木、水産土木) |
参考:国土交通省 近畿地方整備局「建設業法に基づく適正な施工体制と配置技術者」
一定期間以上の実務経験がある
条件の2種類目は、一定期間以上の実務経験があることです。国が定める指定学科を卒業したかどうかで必要な年数は異なり、最短で3年以上、最長だと10年以上の実務経験を積むことで主任技術者になることができます。
卒業した学科 | 必要な実務経験年数 |
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卒業後3年以上 |
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卒業後5年以上 |
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卒業後10年以上 |
参考:国土交通省 近畿地方整備局「建設業法に基づく適正な施工体制と配置技術者」
国が定める指定学科の一覧
許可を受けようとしている建設業 | 対応する指定学科 |
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土木工学(※)・都市工学・衛生工学・交通工学に関する学科
※土木工学には、農業土木・鉱山土木・森林土木・砂防・治山・緑地・造園に関する学科を含む |
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建築学・都市工学に関する学科 |
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土木工学・建築学に関する学科 |
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電気工学・電気通信工学に関する学科 |
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土木工学・建築学・機械工学・都市工学・衛生工学に関する学科 |
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土木工学・建築学・機械工学に関する学科 |
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土木工学・機械工学に関する学科 |
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建築学・機械工学に関する学科 |
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土木工学・建築学に関する学科 |
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建築学・機械工学・電気工学に関する学科 |
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土木工学・建築学・機械工学に関する学科 |
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土木工学・建築学・都市工学・林学に関する学科 |
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土木工学・鉱山学・機械工学・衛生工学に関する学科 |
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建築学・機械工学に関する学科 |
※出典:国土交通省「指定学科一覧」
コラム:実務経験の数え方は?
実務経験は、許可を受けようとする建設業での実務かつ、建設工事の施工に直接関わる経験であればすべて経験年数に数えられます。一方で、建設業者に所属していても、営業や事務など、建設工事に関係のない経験は年数に含まれないので注意してください。
指定された、登録基幹技能者の講習を受けている
条件の3種類目は、登録基幹技能者の認定を受けていること。2018年4月1日から、指定された登録基幹技能者の講習を受けている人も、主任技術者要件を満たす者として認められるようになりました。
対象となる講習は、次の33種類です。許可を受けようとする建設業に対応した講習を受けていれば、実務経験・資格の要件を満たしている場合と同じく、主任技術者を務めることができます。
主任技術者になることができる、登録基幹技能者講習の一覧
対応する建設業 | 登録基幹技能者講習の種類 |
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大工 |
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左官 |
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とび・土工 |
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石 |
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屋根 |
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電気 |
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管 |
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タイル・れんが・ブロック |
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鋼構造物 |
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鉄筋 |
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舗装 |
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しゅんせつ |
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板金 |
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ガラス |
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塗装 |
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防水 |
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内装仕上 |
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熱絶縁 |
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電気通信 |
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造園 |
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建具 |
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消防施設 |
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出典:国土交通省「登録基幹技能者講習修了証の取扱いについて(PDF)」
【注意】講習修了証の再発行が必要なケースも
主任技術者の要件を満たしていることを証明するには、講習修了証が必要です。基本的には、既に手元にある講習修了証で問題ありませんが、次の5種類の講習では、新しい様式の修了証を再発行しなければならないケースもあります。
再発行が必要な登録基幹技能者講習 | 公式サイト |
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登録橋梁基幹技能者講習 | 日本橋梁建設協会 |
登録トンネル基幹技能者講習 | 日本トンネル専門工事業協会 |
登録海上起重基幹技能者講習 | 日本海上起重技術協会 |
登録外壁仕上基幹技能者講習 | 日本外壁仕上業協同組合連合会 |
登録標識・路面標示基幹技能者講習 | 全国道路標識・標示業協会 |
もし手元の講習修了証に主任技術者の要件を満たす者であると認められる旨が明記されていなければ、旧様式の修了証なので再発行が必要です。講習を開催している協会の公式サイトを確認し、再発行手続きを行いましょう。
(セコカンプラス編集部)