配電系統における地絡事故時の零相電圧(V0)を算出方法

配電系統の零相電圧の求め方 ㈱高岳製作所 監査役 松田 高幸 

 

配電系統における地絡事故時の零相電圧(V0)を算出方法として、テブナンの理による方法対称座標法による方法、直接求める方法などがありま すが、今ひとつ理解不足です。それぞれの方法について、注意事項を織り込みながら、わかりやすく説明します。

 確かに、テブナンの理による方法、対称座標法による方法、直接求める方法は、それぞれの特徴があり、注意すべき点も異なります。
ここでは、違いがしっかり身につくように極力似通った方法で解き、併せて特徴・注意事項について 簡単に説明します。
また、実務面で必要になる保護リレー(特に、方向地絡リレー(DGR))の入力電圧、入力電流について、参考として簡単に触れたいと思います。

① 回路のイメージ

② 計算式の流れ

・第1図(b)から(1)~(4)式

について整理((1),(2),(4)式)

の式

・DGRの入力電圧,入力電流

③ 特徴

  • 配電系統のように非接地系統では、テブナンの理を活用して零相電圧を求めることができます。((第1図(a)の中性点抵抗)が、多くの場合、等価的に10kΩ程度と大きく線路や変圧器の抵抗()、インダクタンス()等を無視できるので、テブナンの理を用いて計算できます)
  • テブナンの理を用いると簡単に零相電圧(ここでは、(7)式の)を求めることができます。
  • 注意点は、第1図に示すように、と逆向きになっていることです。  (式では(4)式のとおり、となる。対称座標法のとは逆向きなので注意。)
  • DGRの入力電圧は、GPTの原理から各相電圧の和(ベクトル和)なので、結局3となる。(GPT比は、製品や各会社によって異なる場合があるので注意が必要です)
  • DGRの入力電流は、ここではのみとしている。

対称座標法による方法

① 回路のイメージ

② 計算式の流れ

・第2図 (b)から(9)~(12)式

について整理((1),(2),(4)式)

の式

・DGRの入力電圧,入力電流

③ 特徴

  • 66kV以上等の特別高圧系統では、もっぱら対称座標法を用いて計算しています。(線路や変圧器の抵抗()、インダクタンス()等を無視できないため)
    なお、対称座標法を用いる場合は、回路が平衡である必要がある。
  • 対称座標法の場合のは、第2図のとおりと同じ向きになっている。(式では(16)式のとおり、対称座標法の定義から、は逆向きになる)
  • (15)式のとおり、も逆向きになるが、リレー入力電圧は、テブナンの理と同じになる。
  • リレー入力電流は、3の係数がつくが結果は、テブナンの理と同じになる。
  • 対称座標法は、定義や計算法をしっかり修得する必要があるが、幅広く適用できる。

直接解く方法

① 回路のイメージ

② 計算式の流れ

・第3図からの式
の式
・DGRの入力電圧,入力電流

③ 特徴

  • a,b,cの不平衡が無視できないときに、この方法を用いる場合がある。
  • ここでは地絡事故時(にて接地)を想定しているが、=∞とすると常時のとなる。
  • シンプルな回路なので、直接解いてもさほど複雑な式にはなっていませんが、回路が少しでも加わると複雑な式になります。

補足

  1. 紙面の都合上、細かな説明は省略していますが、ここではそれぞれの方法が理解・対比が出きるように同じような流れで、DGRの入力電圧(),入力電流()、等を求めました。
  2. 方向や係数について、違いがありますのでご注意下さい。 もちろん、いずれの方法で求めてもDGRの入力電圧(),入力電流()は、同じになります。
  3. 配電系統の零相電圧()を求める場合、GPT(接地変圧器)の変成比、3次回路の抵抗()によって、等価的な中性点抵抗値が異なります。実務面ではこれらについてもご注意下さい。

参考

(参考1)としてGPT3次抵抗の中性点抵抗への換算例を示します。
(参考2)としてDGRの判定例を示します。

(参考1) GPT3次抵抗の中性点抵抗への換算

(参考2) DGRの判定方法 

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