屋外キュービクル(変電設備)の消火器設置は義務?

火災の危険がないように、屋外キュービクルは安全に管理・運用しなければなりません。

しかし、「屋外キュービクルの消火器設置は義務なのか?」「設置基準はどうなっているのか?」をご存知でしょうか。

本記事では、キュービクルと消火器の基礎知識やキュービクルにおける消火器設置基準に関して法令をもとに紹介します。

火災や波及事故など万が一の事態を防ぐためにも、屋外キュービクルの消火器設置基準についてきちんと把握しましょう。

屋外キュービクルに消火器設置が義務なのか知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

キュービクルについて最低限知っておくべきこと

キュービクルの役割など、キュービクルについて最低限知ってほしいことを紹介します。

そもそもキュービクルとは?

キュービクルとは、正式名称は「キュービクル式高圧受電設備」といいます。

発電所から変電所を経由して送られてくる6,600Vの電気を、100Vや200Vと日常生活で利用できる電圧に降圧し、施設内の各所に配電する設備です。

立方体という意味のキューブ(Cube)から派生した言葉で、商業施設や駐車場に設置されている金属製の箱を見たことがあるかもしれません。

箱の中にはさまざまな機器が収納されています。

例えば、変圧器・区分開閉器・断路器・遮断器・保護継電器・制御装置・計測機器・低圧配電設備で構成されているのが一般的です。

キュービクルは、小さな変電所のようなものといえます。

キュービクルの役割

キュービクルの役割や設置メリットについては、以下の例が挙げられます。

  • 電気料金のコスト削減
  • 高い安全性や耐環境性
  • 設置・メンテナンスが容易
  • 狭い場所にも設置可能

高圧電力と低圧電力を比較すると、高圧電力の方が安く電気料金単価が設定されています。

キュービクルを設置すれば、電力会社から高圧または特別高圧のまま効率的に受電でき、電気料金のコスト削減が可能です。

また、キュービクルは、さまざまな機器が1つの金属製の箱に収められています。

屋外にキュービクルを設置しても、直射日光や風雨などの影響を軽減することが可能です。

急な漏水や落雷などにより配電にトラブルが発生しても、接続された負荷設備を保護し波及事故を防ぐ役割も担っています。

※キュービクルについてや設置メリットについては、以下の記事を参考にしてください。
キュービクルとは?設置のメリットや注意点などを解説

キュービクルが引き起こす火災事故

キュービクルが引き起こす火災事故の1つである、「波及事故」を知っていますか。

波及事故とは、高圧受変電設備などで発生した事故が原因で電力会社の配電線を停止させ、工場やビルなどの電気設備を停電させる事故を指します。

波及事故により近隣施設、特に交通システムや病院に被害を与えた場合、損害賠償責任を負うことは避けられません。

波及事故の原因は、設備のメンテナンス不足からくる機器不良がほとんどです。

引用:関東電気保安協会

キュービクルの定期的なメンテナンスは欠かさずに実施し、老朽化したキュービクルの部品の交換や修理をおすすめします。

※キュービクルの波及事故について詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
キュービクルの波及事故とは?原因や事例、予防方法などを解説

キュービクルに求められる安全性とは

キュービクルを設置する際には安全性が強く求められます。

キュービクルの設置・運用に関して、保安規定の制定や電気主任技術者の選任などが電気事業法により定められています。

定期的な日常点検や年次点検を実施し、キュービクルが安全に作動するかどうかを確認・運用するのが必須です。

一方で、安全性を十分に確保するには、コストの発生は避けられません。

しかし、キュービクルは性質上、安全性を確保しないまま運用すると危険が伴います。

万が一火災が発生した際に迅速な対応を行うために、保安点検を必ず実施しましょう。

※キュービクルの保安点検については、以下の記事を参考にしてください。
キュービクルは保安点検が義務!点検内容や法律、費用などを解説

消火器の基礎知識

消火器の基礎知識やキュービクルで発生した火災に適した消火器について解説します。

消火器の種類

消火器には、さまざまな種類があります。

家庭用として一般的に普及している「粉末消火器」や、水を放出する「水消火器」、冷却作用と強力な浸透作用を持つ「強化液消火器」など多種多様です。

火災は以下の3つの種類に分類され、火災の種類に適応する消火器を用いて消火活動を行わなければなりません。

  • A 木材や紙、繊維などの普通火災
  • B 灯油やガソリンなどの油火災
  • C 配電盤やコンセントなどの電気火災

消火器に「ABCマーク」やイラストが表示されているので、確認してください。

電気火災に効果的な消火器

電気火災には、ハロン消火器や二酸化炭素消火器、粉末消火器が効果的です。

キュービクルなど電気機器に水がかかれば、引火物を飛散させたり、火が余計に燃え広がったりと火災が悪化する恐れがあります。

キュービクルで電気火災が発生した場合、水消火器を使用するのは非常に危険です。

健全な電気機器であっても水損により故障し、漏電被害が拡大する恐れがあるので、適合していない消火器を使用するのは避けましょう。

油火災には有効な強化液消火器も、電気機器の内部故障や漏電の原因となるため、使用はおすすめしません。

消火器の耐用年数

消防法では、消火器の使用期限に関する規定は特にありません。

しかし、消火器を製造・販売しているメーカーは、業務用消火器の使用期限を10年に設定しているのが一般的です。

使用期限が切れた消火器は、腐食や破損、変形の恐れがあり、物損や人身事故につながる恐れがあり非常に危険です。

いざという時に安全に使用するためにも、10年を経過した消火器は交換もしくは耐圧性能点検(水圧試験)の依頼をしましょう。

キュービクルの消火器設置基準

「屋外キュービクルに消火器の設置は義務付けられているのか?」と疑問に思う方は少なくありません。

キュービクルにおける消火器や消火設備の設置基準を消防法をもとに解説します。

消火器の設置義務がある建物

消火器具の設置が必要な防火対象物は、以下の表をご覧ください。

引用:一般社団法人 日本消火器工業会

「屋外キュービクルは防火対象物に該当しないのでは?と疑問に思った方はいませんか。

屋外キュービクルにおける消火器の設置で考慮すべき点は、「付加設置」の規定です。

付加設置とは、上記の設置基準とは別に設定された消火器に関する設置ルールを指します。

通常の設置基準とは異なり、以下のような保管場所では消火器を設置しなければなりません。

  • 灯油やガソリンなどの少量危険物
  • 指定可燃物(わら製品など消火活動が困難なものと政令で指定されたもの)
  • ボイラー室、乾燥室のような多量火気使用場所
  • 電気設備

キュービクルは受電設備のため、付加価値の規定に該当します。

キュービクルの面積が、100㎡以下ごとに消火器1本を設置しなければなりません。

さらに、通常の消火器の設置のみならず、電気火災に適応した消火器の設置が必要です。

第一項の防火対象物又はその部分に変圧器、配電盤その他これらに類する電気設備があるときは、前三項の規定によるほか、令別表第二において電気設備の消火に適応するものとされる消火器を、当該電気設備がある場所の床面積百平方メートル以下ごとに一個設けなければならない。
引用:消防法施行規則第6条第4項

ただし、各市町村が定める「火災予防条例」の確認も忘れないでください。

なぜなら、消防法が設定する消火器の設置基準や義務の内容と異なる場合があるからです。

例えば、大阪市ではキュービクルの消火器設置が明確に義務付けられています。

令別表第1に掲げる防火対象物と同一の敷地に存する電気設備(急速充電設備を除く。)又は火気使用設備が屋外に設置されている場合であっても、当該設備が令別表第1に掲げる防火対象物に設置されているものとみなして消火設備の設置に係る規定を適用して指導すること。

引用:電気設備及び火気使用設備に係る消火設備の運用指針

キュービクルに消火器を設置する際は、所轄消防に確認することをおすすめします

消火器具に関する基準

消防法施行規則の第6条から第11条に消火器を設置する基準は、以下のように事細かく規定されています。

  • 消火器は階ごとに設置する
  • 防火対象物の各部分から歩行距離で20m以内(大型消火器は30m以内)に消火器を設置する
  • 付加設置設備(少量危険物・指定可燃物・変電設備・火気使用設備)があれば設置する
  • 設置場所に適応した消火器を設置しなければならない
  • 通行・避難に支障がなく、使用に際して容易に持ち出せる場所に設置する
  • 床面からの高さが1.5m以下の場所に設置する
  • 屋外・厨房や蒸気・ガスなどが発生する場所に設置する場合は格納箱などに収納する

消火器は、人の手が容易に届きやすい高さに設置するのが必須です。

高すぎる場所に消火器を設置してしまうと、火災発生時に背の低い人が消火器を手に取れず消火活動を行えないかもしれません。

また、誰もが消火器の存在を瞬時に認識できるように、「消火器」という案内図記号(ピクトグラム)の設置が規定されています。

消火器設置基準は能力単位により変化

消火器の設置基準は、能力単位が採用されています。

能力単位とは、消火器の大きさや消火薬剤の種類など1本の消火器の消火能力を示す単位です。

建物の用途や延べ面積に応じて能力単位の計算が必要になり、設置すべき消火器の本数は変動します。

ただし、消防法施行規則第8条によると、屋内消火栓やスプリンクラー設備などを適切に設置していれば、消火器の能力単位を半分もしくは1/3まで減らすことが可能です。

一方で、歩行距離に関する緩和は記載されていないので注意してください。

キュービクルを設置する時は消火器を用意し安全に運用しよう


高圧電力を扱うキュービクルでは、火災のリスクは避けられません。

漏電・感電など痛ましい事故や波及事故を防止するためにも、キュービクルの火災対策は必須です。

万が一の火災に対して十分に備えることで、安全にキュービクルの運用・管理ができます。

消防法や所轄消防に確認し、適正な消火器や消火設備の準備を整えましょう。

電気事業法により、キュービクルなど「自家用電気工作物」には保安点検が義務付けられています。

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